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✔︎　そこでしか味わえないものの価値
✔︎　1日を終えてわかったこと

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私が「イクラが食べられないんです」というと、皆んな口を揃えて言います。それはおいしいイクラを食べてないから！北海道で食べたら全然違うよ！と。

まだ北海道でイクラを試せていないので証明はできないのですが、農産物にも、産地で食べた方が絶対においしい、またはそこでしか食べられないものがある、という事実を意識している方は、それほど多くないような気がします。どちらかというと私もその一人ですが、今回ある地域で出会ったイチジクは、今までのイチジクの概念を変えるものでした。

あなたが知っているイチジクとは、一味違うイチジクの話です。

 

そこでしか味わえないものの価値

土曜日の朝8時。
いつもなら夢にさまよっている時間ですが、この日は畑でイチジクの収穫をしていました。8月〜10月が旬の果物ですよね。今がまさに。

禁断の果物、不老不死の果物、（名誉のために名前は明かしませんが）樹体の切り口からにじみ出る白い液がエロい果物…などなど、歴史的にもイチジクにまつわるお話が多いだけに、謎めいた不思議な果物と言われています。こういう謎めいた感じを含め、好きですね。

我が家にも、一文字仕立て（後述）中のイチジクが二株ありますが、まだ一年生のひよこなので、実が採れるようになるまではしばし先…

そんなところに、近場の農家さんが「朝採りイチジクの収穫体験」をやっているとの噂を聞きつけました。首が長くなる前に、友達を誘ってさっそくポチッと。(要予約なんです)

当日、収穫体験に来ていたのは、私たちの他に、ご夫婦１組とママ友1組の、計3組でした。

 

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「アダムとイブが体を隠した葉っぱがイチジクの葉っぱだった（諸説あります）と言われるほど、イチジクは歴史が古い果物です。
今日収穫してもらうイチジクは、「バナーネ」という品種ですが、日本で生産されているイチジクの80％は桝井ドーフィンという品種です。皮が硬く、流通に向いているからですね。皮を剥いて食べるのが一般的で、糖度は12、13度くらいです。
反面、バナーネは皮ごと食べられるほど皮が柔らかいので傷つきやすく、流通には向いていない品種です。しかし糖度が高いのが特徴ですね。
うちは、敷地内のカフェで販売をしていますが、ルールとして、16、17度以下は出さないようにしています。昨日が雨だったので少し心配しましたが、朝測ったところ18度はありましたね。一番甘い時で、20〜25度が出る時もあります。」

16、17度ですと、最低でもメロンと同じような糖度ということになります。ちなみに、我が家のイチジクも桝井ドーフィンですが、確かに、一般的によく見られる品種を基準に選びました。

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「イチジクは好きなだけ採っていいです。採ったからといって、全部買う必要はありません。好きなだけ採って、買いたいものを買いたい分だけ買って（150円/100g）帰ればいいんです。
ちなみに、イチジクは追熟しないため、取った時が一番おいしいです。なので日持ちせず、生で食べられるのは大体３日までですかね。３日を過ぎたら冷凍保管してください。冷凍することで、もう少し糖度が上がりますから。少しだけ解凍して丸かじりすると、シャーベットみたいになりますよ。飲むヨーグルトとミキサーに掛け、レモン汁を一滴垂らしても、おいしいです」

こう言われると、生のイチジクと、半解凍してシャーベットみたいになったイチジクと、飲むヨーグルトとミキサーに掛け、レモン汁を一滴垂らしたイチジクを、全部食べてみたくなりますよね。さすが！農家も営業力です。

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「すでに陽が昇って暑いですが、イチジクは朝に甘みが凝縮するので、朝採りイチジクの味は格別ですよ。暑かったら無理せず、いつでもハウスから出て来ていいですからね。では、そろそろ行ってみましょうか」

「はーい」

当日、参加者の中に車椅子の方がいたんですが、ハウスの中は車椅子が楽々通るほど通路が広く、何より特徴的なのは、「一文字」というイチジクの整枝法にありました。そう、我が家の二株のイチジクが目指すところ！「一文字仕立て」です。

 

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「うちは一文字という仕立て方でイチジクを育てています。地面に対して平行になるように２本の主枝を横に延ばし、その主枝から縦方向に枝を誘引しているんですね。この方が、日当たりが良く、収穫もしやすいし、品質の高い果実が取れるんですよ」

木に登ってイチジクを採ったという思い出がある私にとって、一文字仕立てされたイチジクの木を初めて見たときは、衝撃そのものでした（笑）。とにかく理にかなっていますよね。しかも下から熟していくので、さっきの車椅子の方も、子供も、収穫体験をするのにはぴったりです。

 

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「どうぞ、食べてみてください。これは朝採り収穫体験に来てくださった方へのお礼です」

「あまーい！」

「私が知っているイチジクと違う！」

一度経験してしまうと、もう元には戻れなくなるんですよね。この日、私たちは渡ってはいけない橋を渡ってしまいました…（笑）

 

 

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「それいいんじゃないですか。もう採ってくださいって言ってますよ」

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「あ、言ってますか？じゃあ、採りまーす（笑）」

そう、バナーネは、赤くならない白いイチジクなので、食べ頃の見分け方が最初は難しいですが、30分間収穫してみた結果、おそらくこういうのが食べ頃です。

• 全体的に色のムラなく薄く茶色がかっている
• 軽く握った時に柔らかい
• 表面に亀裂が入っている
• 亀裂から蜜がにじみ出ている
• なんか表面がシワシワしている

どうでしょ？

そうこうしているうちに、さすがに暑かったせいか一人二人とハウスを離れ、いつのまにかみんなここに集合。収穫したイチジクは、さっきの説明にもあったように、買いたいものを買いたい分だけ買えます。

選ばれた12個。これで1,050円→1,000円です。後でおまけまで付けてくださったので、スーパーで買うよりはるかにお得ですね。

残されたイチジクたちは、農家さんの方で選別して、カフェに下ろしています。参加者は、好きなだけ採って、買いたいものだけを選んで買って帰ればいいのでストレスがないし、農家さんは、収穫の時期に人手が増え、しかも喜んで買ってもらえるので、WINWINな仕組みだなと思いましたね。近ごろ観光農園が流行って、お客さんに色々な体験をさせていますけど、これはかなり満足でした。

今、そこのあなたも、やってみたい、食べてみたい！と思っているはず。是非体験してみてください。ただ、元には戻れなくなってしまう副作用はありますけどね。

そこから数日後、
試してみました。イチジクのシャーベット！

 

味は、直接お確かめください(^^)

 

１日を終えてわかったこと

• 農家も営業マンになる時代
  農家さんの食べ方提案や試食サービスによって、本来なら傷つきやすい、日持ちしないのがデメリットな果物を、逆にたくさん買って帰りたい気にさせてくれる。農業は生産だけじゃないよ、やはり。
• 自分が汗をかいたという新たな付加価値
  このイチジクの価値は、「おいしい」、「市場では手に入らない」だけだろうか。30分という短い時間でそこに加わったのは、自ら汗をかいて収穫したという新たな価値。実際、「人にお裾分けしたいから」を理由に、収穫したものを残さず買って帰る人もいて、通常の買い方をはるかに越えてくる。
• 市場に流通できない→地域創生の道
  市場に流しやすい、日持ちするなど、流通業や小売店サイドの考え方より、実はもっとおいしいものがあるという事実を知らずに生きていくのは、果たしてどうなの？と思うけど、逆にこういうところに地方の生きる道が残っていると思う。流通できないことを逆手に取ってとことん利用すべき。